2009年10月アーカイブ
わが高校野球部は奇跡的に勝ち続けた。
それと逆にぼくたちの恋は順調にゆっくりだけど進んでいった。
僕のウォークマンにはあの日からTUBEではなく、彼女が歌ってくれたレベッカがいつも入っていて、それを大事に聞いてい
るそんな日々だった。
というのはあれで、正直言うとこれからどう進めばいいのか分からなかったのかもしれない。
手をつないで抱き寄せてキスをすればおのずと進むのだろうが、そういうルールはあの時の僕にはなかった。
ただ、野球があるその日にみんなに混ざりながらも二人でいるのが精一杯でした。
奇跡が終わる朝、僕はいつものように電車に乗った。
今までと違うのはその時間のその車両には鮎川さんがいるということ。
それも一人だ。
奇跡が終わるのを予感してたかのようにその日は朝から二人の時間が続いた。
球場までの50分と試合時間の2時間と終わってからの3時間。
僕の体感時間はこの5時間50分が10分ぐらいに感じていた。
せっかく長い時間いれたのに、その日の野球は今までの勝ちが嘘かのような惨敗をしてしまっていた。
その応援を一応していた僕たちはその負けの雰囲気を引きずって、遊んでいた。
でも、野球は負けたけど、僕はまだ負けてない。
この時の僕の脳みそはおそらく人生で初めて、恋のために動いていた。
次に会うきっかけがないのだから。
できたばかりの恋脳で僕は危機を判断し、次の手を考えた。
『遊園地に行こう』
精一杯の決断だった。
そんな僕を見て鮎川さんは間も開けづにOKしてくれた。
そうなんだ、僕の恋はまだ始まったばかり。野球でいえば1回の裏か2回の表ぐらい。
その敗戦の日から1週間後に設定した遊園地プロジェクトに向け、僕は動き出した。
よく女性をデートに誘うなら1週間後いいというのがよくわかる。
その日に向け、僕は初めて男を磨こうとしていた。
髪を切り、服を買い、交通手段を念入りにチェックし、食事の場所、・・・
考えることが尽きない。
遊園地プロジェクトを三日後に迎えた僕のもとに封のあいた一通の手紙がきた。
差出人は鮎川まどか。持ってきたのはお母さん。
今から18年前の夏の出来事。